メモリ株はまだ上がるのか――キオクシア、Micron、SanDisk、SK hynixを分ける二つの相場
議論参加:アオイ (経済・金融アナリスト) / ケンゴ (テクノロジー記者) / ソラ (生活者代表) / ツバキ (人間・文化の観察者) / テツオ (校閲・ファクトチェッカー)
2026年7月、メモリ株は奇妙な位置にいる。業績は記録的で、DRAMとNANDの値上がりもまだ止まっていない。それでも、キオクシアホールディングス(285A)、Micron Technology(MU)、SanDisk(SNDK)、SK hynix(000660)は、いずれも直近高値から値を下げている。
7月10日終値を基にすると、下落率はおおむね19〜32%。悪材料で崩れたというより、数カ月であまりに速く上がった株価が、次の上方修正を待っているように見える。
では、これは強い業績の途中にある押し目なのか。それとも、利益が最も大きい時にPERが低く見える「ピーク利益の罠」なのか。5人が30ターン議論した。
結論を先に言えば、メモリ市況はなお強い。だが4社の株価が同じ方向へ動くとは限らない。
今後3〜12カ月を分けるのは、価格上昇の継続そのものより、会社予想をさらに上回る需要と利益が出るかどうかだ。
同じメモリ株ではない
最初に分けるべきなのは国ではなく、何を売っているかだ。
| 銘柄 | 主な相場の軸 | 強み | 株価が失速しやすい条件 |
|---|---|---|---|
| Micron | HBM・サーバーDRAM+NAND | HBM4量産、DRAMからSSDまで持つ | AI設備投資の鈍化、HBMの歩留まり・認定遅延 |
| SK hynix | HBM・サーバーDRAM+企業向けSSD | HBMの先行と高付加価値メモリ | 顧客集中、巨額投資、競合の追い上げ |
| キオクシア | NAND・企業向けSSD | 大容量フラッシュ、AI推論向けSSD | NAND価格反転、投資負担、共同生産の調整 |
| SanDisk | NAND・企業向けSSD | データセンター比率上昇、長期顧客契約 | 市況感応度、期待先行、8月決算の未達 |
HBMは、AI半導体のそばに置き、大量のデータを高速に渡す高帯域メモリである。主戦場はDRAMだ。一方、NANDは電源を切ってもデータが残る記憶装置で、SSDに使われる。
AI学習ではHBMが注目されてきたが、AI推論が広がるほど、モデルや検索データを置く大容量SSDも必要になる。つまり「AIだからHBMだけ」という見方も、「NANDはスマートフォンとパソコン次第」という見方も、すでに狭い。
市況は強い。ただし、勢いは鈍っている
TrendForceは7月3日、2026年7〜9月期の一般DRAM契約価格が前四半期比13〜18%、NAND Flashが10〜15%上がると予測した。値上がりは続くが、上昇率は前の四半期より縮む。理由は、AIサーバー需要が強い一方、パソコンやスマートフォンの顧客が価格上昇を吸収しにくくなったためだ。
アオイ(経済・金融アナリスト)は、ここを「好況終了」ではなく「株価に必要な驚きが小さくなる局面」と読んだ。製品価格が上がっても、投資家の想定どおりなら株価は上がらない。逆に、値上がり率が鈍っても利益予想が再び引き上げられれば、株価は反応できる。
ケンゴ(テクノロジー記者)は、従来のメモリ循環と違う点として、顧客が供給確保のため長期契約を結び始めたことを挙げた。SanDiskは複数年契約と顧客の資金コミットを説明し、キオクシアも長期契約を使いながら生産余力を残す方針を示す。契約が収益の振幅を小さくするなら、過去と同じ速度で価格が崩れるとは限らない。
ただし、契約は需要を永久に保証しない。数量、価格改定、顧客の投資計画、解約条件は外から完全には見えない。長期契約という言葉だけで安定収益と決めつけるのは危険だ。
低PERは「安い」のか
7月10日時点の市場データでは、Micronの予想PERは約6.5倍、SanDiskは約8.6倍だった。一般論なら低い。しかしメモリ株では、利益が頂点に近いほど分母の利益が大きくなり、PERが低く見える。
PERが低いから上がる、ではない。
市場は「この利益が続かない」と考えるから、低い倍率しか払わないことがある。
ソラ(生活者代表)は「これだけ上がった後に割安と言われる方が怖い」と問いかけた。この素朴な警戒は正しい。見るべきは現在の倍率より、12カ月先の利益予想が上がっているか、下がり始めたかだ。
なお、各市場の予想PERは集計方法と更新時刻が異なる。キオクシアとSK hynixを同じ表へ機械的に並べると精密に見えても、かえって誤解を招くため、ここでは比較しない。
4社をどう見るか
Micron:数字は最も強い。期待も高い
Micronは6月24日、2026年度第3四半期の記録的な業績を発表し、次四半期に売上高500億ドル前後、粗利益率約86%を見込んだ。HBM4は主要顧客向けに量産出荷され、245TBの大容量QLC SSDも出荷を始めている。
強気材料は、HBMだけでなくサーバーDRAMとSSDへAI需要が広がることだ。弱気材料は、この高い会社予想さえ市場の出発点になっていること。決算が良いだけでは足りず、さらに上を示す必要がある。
SK hynix:HBM先行の純度と、集中リスク
SK hynixはHBMと高容量サーバーDRAMで先行し、NAND子会社Solidigmの企業向けSSDも持つ。AI投資が続く局面では、4社の中で最も直接的に恩恵を受けやすい。
一方、先行優位が株価へ十分織り込まれた後は、競合の製品認定、主要顧客の発注、巨額設備投資の回収が焦点になる。王者であることと、今の株価から最も上がることは同義ではない。
キオクシア:NAND市況だけでなく、投資の質を見る
キオクシアは6月の投資家説明会で、2026年度の設備投資を前年度の2,800億円から4,500億円へ増やし、次世代BiCS FLASHと工場能力を拡張する方針を示した。企業向けSSDのシェアを約10%から15%超へ高める目標も掲げる。
これはAI推論向けストレージの成長を取りに行く投資だが、NAND価格が反転すれば固定費負担も大きくなる。SanDiskとの共同生産は効率を生む一方、投資や生産の意思決定を調整する必要がある。株価を見る際は、売価だけでなく、投資額に対して出荷量と単位原価がどう改善するかを確認したい。
SanDisk:次の決算が期待値テストになる
SanDiskの2026年度第3四半期は、売上高59.5億ドルで前四半期比97%増、データセンター売上は233%増だった。会社は次四半期の売上高を77.5億〜82.5億ドルと見込む。8月5日の通期決算と8月13日の投資家説明会は、長期契約が本当に利益の安定へつながるかを確かめる場になる。
業績の変化率は4社の中でも鮮烈だが、株価上昇も大きい。好決算を発表するだけでなく、次年度の利益水準と設備投資をどう説明するかが重要になる。
3〜12カ月の三つのシナリオ
| シナリオ | 起きること | 相対的に追い風を受けやすい銘柄 | 撤回を考える指標 |
|---|---|---|---|
| 強気 | AI投資が継続し、HBMからサーバーDRAM・企業向けSSDへ不足が広がる | まずMicron・SK hynix、NAND上昇継続ならキオクシア・SanDisk | 会社予想の再上方修正が止まる |
| 中立 | メモリ価格は上がるが伸び率が低下し、好業績と高い期待が相殺する | 製品認定や原価改善を示した会社 | 在庫日数の上昇、顧客の発注調整 |
| 弱気 | 消費不振がデータセンター以外へ波及し、増産と在庫が需要を上回る | 4社とも下押し。市況感応度の高いNAND型は振れやすい | 契約価格の下落、設備投資削減、利益予想の下方修正 |
ツバキ(人間・文化の観察者)は、情報そのものより「良い材料だけを信じたくなる解釈の偏り」が危険だと指摘した。メモリ不足を信じる投資家ほど、価格上昇率の鈍化や在庫増加を一時的と片づけやすい。
テツオ(校閲・ファクトチェッカー)は、在庫日数を4社で単純比較しないよう求めた。米国、韓国、日本で会計基準と決算期が異なるためだ。比較するなら各社の過去推移に対して異常かを見て、同じ算式と対象期間を使う必要がある。
毎月・毎四半期に確認する5項目
- DRAM・NAND契約価格:上昇しているかではなく、予想より強いか。
- 利益予想の改定:次の12カ月の売上高、粗利益率、1株利益が上向いているか。
- 在庫:各社の過去と比べ、売上より速く在庫が増えていないか。
- 設備投資と装置受注:供給不足を埋める投資が、将来の過剰供給へ変わっていないか。
- 顧客のAI投資:クラウド大手の投資計画、HBMの製品認定、企業向けSSDの出荷が続くか。
結論:不足を買う相場から、上方修正を選ぶ相場へ
4社の共通点は、AIがメモリ需要を学習用HBMから推論用DRAM・SSDへ広げていることだ。相違点は、その需要をどの製品で取り、いくら投資し、どれだけ長く利益へ変えられるかにある。
短期は、記録的業績の後だけに値動きが荒くなりやすい。3〜12カ月では、MicronとSK hynixはHBM・DRAMの利益持続、キオクシアとSanDiskはNAND価格と企業向けSSDへの転換が勝負になる。
メモリ不足が続くことと、メモリ株が上がり続けることは別である。
次に見るべきは市況の強さではなく、現在の高い期待を超える上方修正がどの会社に残っているかだ。
この記事は特定銘柄の売買を推奨するものではない。価格や業績予想は変化するため、投資判断では最新の会社開示と市場データを確認してほしい。
出典を読むときのポイント
- TrendForce「2026年7〜9月期のメモリ価格見通し」:DRAMとNANDの契約価格予想、およびAI需要の強さと消費市場の価格許容度低下を確認した。
- Micron「2026年度第3四半期決算」:次四半期の売上高・粗利益率見通し、HBM4と大容量SSDの出荷状況を確認した。
- SanDisk「2026年度第3四半期決算」:売上高、データセンター成長率、次四半期見通し、複数年顧客契約の説明を確認した。
- キオクシア「2026年投資家説明会」:AI推論向けSSD戦略、企業向けSSDのシェア目標、生産・研究開発計画を確認した。
- キオクシア「投資家説明会Q&A」:2026年度の設備投資額と次世代フラッシュへの投資内容を確認した。
- キオクシア「2026年3月期有価証券報告書」:SanDiskとの共同生産契約の構造とリスクを確認した。
- SK hynix「2026年1〜3月期決算」:HBM、高容量サーバーDRAM、企業向けSSDを中心とする製品戦略を確認した。
キーワード:#キオクシア#Micron#SanDisk#SK hynix#HBM#NAND
出典
- https://www.trendforce.cn/presscenter/news/20260703-13133.html
- https://investors.micron.com/node/50671
- https://investor.sandisk.com/news-releases/news-release-details/sandisk-reports-fiscal-third-quarter-2026-financial-results
- https://www.kioxia-holdings.com/en-jp/ir/news.html
- https://www.kioxia-holdings.com/content/dam/kioxia-hd/en-jp/ir/library/event/asset/Kioxia-Investor-Day-2026-en.pdf
- https://www.kioxia-holdings.com/content/dam/kioxia-hd/en-jp/ir/library/event/asset/Investor-Day-2026-Eng-QA.pdf
- https://www.kioxia-holdings.com/content/dam/kioxia-hd/en-jp/ir/library/securities/asset/Annual-Securities-Report-FY2025-EN.pdf
- https://news.skhynix.com/sk-hynix-announces-1q26-financial-results/