テクノロジー の記事28件
AIにPDFを読ませる前に――Markdown化ではなく『答えてよいページ』を選ぶ
PDFをMarkdownへ変換すればAIは正確に読めるのか。表・罫線書式・グラフが混在する20 PDF、2,643ページを実際にページ単位で仕分けた。重要なのは変換器の勝敗ではなく、行・列・単位・期間を確認済みのページだけを数値回答に使うことだった。
AIだけのゲーム会社、3作目——閾値を3回動かして、3回とも効いていなかった
AIエージェントだけのゲーム会社の3作目。143個のテストが通り、提出できる状態まで来た。そこから半日で、6つのものが「実は繋がっていなかった」と分かる。広告の条件、タッチの指定、会議の宛先、起動処理、そして測ったデータに私がつけた説明。全部そろっているように見えていた。
AIだけのゲーム会社、2作目の全記録——テストは594個通った。人間が3分遊ぶまで、誰も気づかなかった
AIエージェントだけのゲーム会社が2作目を作り、品質基準を全部クリアし、提出できる状態にした。そこで人間が初めて遊び、1つ質問した。「壁に張り付いてると結構進むけど、ペナルティはないの?」——そこから会社の判断が順番に崩れていく。効かないつまみ、落ちないゲート、そして「かわいい」を扱えなかった組織の記録。
AIは自分で予測したバグを、自分の道具では試せなかった——実行を禁じたら3本とも当てた
Claude Opus 5・Sonnet 5・Fable 5に、同じデータベースの実装を「一切実行せず、読むだけで」レビューさせた。前回、同じ3モデルはクラッシュ注入やファジングといった道具を作って同じ実装を攻撃し、ある重大な欠陥を3本とも検出できなかった。今回、道具を取り上げた3本は、その欠陥を全員が最高確信度で指摘した。しかも1本は、前回の攻撃前にその欠陥を正確に予測しておきながら、それを試せない道具を自分で作っていたと記録に残していた。一方で、ファイルを実際に壊さないと見えない欠陥は3本とも見逃した。続く修正フェーズでは原因の特定は一致したが、5件をどう束ねたかと防御の深さは割れた。そして編集部自身が、裏付けの足りない数字を本物の差だと信じて記事に書きかけた。
AIがまとめた結論は読みやすかった――未解決を落とし、覆された案を消していたから
AIエージェントの議論システムで、最終結論が議事録と食い違う事故が続いた。原因は司会AIが見ている窓の狭さだった。直して同じ議題を回し直すと、結論は読みにくくなり、そして正しくなった。
AIだけのゲーム会社を作った――議論が見落とし、実測だけが見つけたもの
CEO・CPO・CTOをすべてAIエージェントにしたゲーム会社を立ち上げ、企画から実装・品質検証まで走らせた。ゲームは完成し307のテストが通ったが、会社は自ら定めた出荷基準に自分の裁定で落ちた。AIの役員たちは正しい問いを立て、そして効かないノブを回し続けた。
「バグは0件でした」と報告したAIだけが、バグを見つけられなかった――3つのモデルに同じデータベースを攻撃させる
Claude Opus 5・Sonnet 5・Fable 5に、同一の仕様書で3つの組み込みKVストアを攻撃させた。標的には、AIが書いた2つの実装と既存OSSのredbを含む。結果、1つのモデルは「違反0件」と報告し、残る2つは同じ実装から実在するデータ消失バグを、同じソースコードの同じ関数まで独立に特定した。さらに3つのモデルすべてが、最初に書いた検証ツールで仕込んだ欠陥を取りこぼしていた。陰性対照がなければ、3本とも壊れた道具のまま0件を報告していたことになる。連載が3回続けて出してきた「自分のバグは自分では見つけられない」という仮説は、今回否定された。
「2.0倍」と置いたら未達、「1.5倍」と置いたら達成――ほぼ同じ速さのデータベースを2つのAIに作らせた
Claude Opus 5とSonnet 5に、同じ仕様書でクラッシュ安全な組み込みKVストアをゼロから作らせ、redbと性能を比較させた。両者とも完走し、両者ともredbの約2倍のコミットスループットを達成した。しかし自分で置いた目標値が2.0倍と1.5倍で違ったため、速いほうが「未達」、遅いほうが「達成」と記録された。編集部が統一ワークロードで測り直したところ自己申告値はほぼ再現し、判定だけが反転した。さらに両者とも測っていなかった競合下の挙動では、OCCの再試行回数に200倍の差が出た。fsync、グループコミット、MVCCといった前提知識から丁寧に解説する。
テストは6回落ちて、6回とも実装は正しかった――Claude Opus 5に麻雀ゲームを作らせた編集部が、バグの見つかり方を検証する
Claude Opus 5に日本のリーチ麻雀のスタンドアロンアプリを最初から作らせ、全工程を記録した。全37役・符計算・点数早見表57マスは実装バグ0件で通った一方、テストが落ちた6件はすべてテスト側の誤りだった。実装バグ10件を検出したのは統計・実行時間の違和感・スクリーンショットであり、テストは1件も見つけていない。CPUの評価関数の係数ミスで和了率が4%になった件、最強に設定したキャラが1000半荘で2位だった件、赤ドラを残せないUI仕様バグ、そして「要件は満たしたが良くない」牌デザインまで、うまくいかなかった箇所を編集部7人で検証する。
同じ仕様書で3回作らせた――Opus 5とSonnet 5の差より、対話か自律かの差のほうが大きかった
同一のフェーズ分割プロンプトで日本のリーチ麻雀アプリを3回作らせ、モデル差とハーネス差を切り分けた。Opus 5を対話モードと自律エージェントモードで、Sonnet 5を自律エージェントモードで実行し、2軸で比較した。3本すべてが同じ罠に落ちた一方、前回「モデル差」と結論づけたウマ・返し点の実装漏れは、自律モードのOpus 5では起きておらず、ハーネス差だったことが判明した。失敗コミットの記録遵守にはモデル差が残り、完成度は自律モードのほうが高いという逆説的な結果も出た。あわせて、この課題がモデルを区別しなかった理由を分解し、曖昧な仕様・他人のコードのデバッグ・テストで網羅できない正しさなど、差が出るはずの条件を検討した。
重ねたボタンはPNGに写らない――CanvasにHTMLを焼き込む実験的APIが埋めようとしている溝
CanvasのfillTextでは文字の折り返しもアクセシビリティも自分で作り込むしかない。WICGが提案する『HTML in Canvas』は、本物のHTMLをCanvasのピクセルとして焼き込む実験的APIだ。何が変わり、何がまだ危ういのかを編集部の議論で整理する。
入力した文書を外に出さないAI――ブラウザの中だけで動くLLMの現在地
WebGPUの対応が主要ブラウザで進み、WebLLMやTransformers.js v4によってブラウザの中だけでLLM推論が動くようになった。対応状況の実際、医療・法務での価値、初回ダウンロードや発熱という現実的な壁、クラウドAIとの使い分けを編集部の議論から整理する。
ミームちゃんは、なぜ人間にならなかったのか――1枚絵からAIとBlenderで3D化した失敗の記録
AI投資部のタイトル画像をもとに、目を描かないホログラムのミームちゃんをBlenderで3D化した。改良しても人間らしくならなかった理由はAIの限界か、元画像と指示の問題か。実際の制作過程と7人の議論から検証する。
「動くはず」が動かなかった――ブラウザ内AI文章エディタを自作して見えた3つの壁
WebGPUの上で動くブラウザ内LLMと、ビルド不要の単一HTMLアプリという2つのトレンドを、編集部は1つの道具として実際に組み合わせた。ツールバー付きリッチテキストエディタにAIの「新しく書く」「選択範囲を書き直す」機能を足して動かしたところ、対応ブラウザでも動かない環境、AIの出力を信用しない設計の必要性、undoが効かないバグ、小型モデルの指示追従の弱さという、組み合わせて初めて見える壁にぶつかった。
そのメモ、サーバーは要らない――ブラウザが持つ「本物のファイルシステム」とローカルファーストの代償
OPFS(Origin Private File System)は2023年3月に成熟した技術だが、2026年4月にSQLite WASMが新しい永続化VFS「opfs-wl」を追加するなど周辺実装が動いている。データの主コピーを端末に置く「ローカルファースト」設計が、クラウド依存への対抗策になる一方、端末紛失・同期・ブラウザ実装差という代償も抱える現状を編集部の議論から整理する。
z-indexの奪い合いに終止符――Popover APIとCSS Anchor Positioningは『JS依存の10年』を終わらせるのか
ツールチップやドロップダウンを表示するたび、z-indexの数値を上げて他の要素と競わせてきた。Popover APIとCSS Anchor Positioningは、この『重ね順の奪い合い』をブラウザの標準機能として解消しようとしている。Baseline到達は2025年と2026年1月で別々、Newly AvailableでWidely Availableではない現状を、編集部の議論で整理する。
URLひとつで動くPython――Pyodideの教育的価値と、崩れゆく『Wasmだから安全』という前提
CPythonをWebAssemblyにコンパイルしたPyodideは、インストール不要で教育現場の壁を壊す一方、AIエージェントの実行基盤としてサーバー側で使われる場面ではCVSS9台の脱獄脆弱性が相次いでいる。ブラウザ内利用とサーバー側利用でリスクの質がどう違うのか、編集部の議論から整理する。
指がリンクから離れる前に、次のページはもう届き始めている――Speculation Rules APIという先読みの賭け
リンクにカーソルを乗せた瞬間、クリックする前にブラウザが裏側でページを取りに行く。Shopifyが2025年6月に本番導入し、デスクトップ130ms・モバイル180msの改善を実測したSpeculation Rules APIは、それでもMDNが「Limited availability・Experimental」と分類するChromium限定の実験的機能だ。読まれないページの転送・従量課金ユーザーの負担・計測の歪みという反対意見を編集部の議論で検証する。
『遷移がなめらかだから』でSPAを選んできた10年に、View Transitions APIが問うもの
普通のリンクをクリックすると画面が一瞬白く抜ける――この違和感を消すためだけに、多くのチームはSPA化を選んできた。View Transitions APIのsame-documentとcross-documentを混同せずに整理し、MPAのままアプリのような遷移を実現できる可能性と、Firefox未対応・過剰演出・前庭障害への配慮という注意点を編集部の議論で検証する。
マイクを押す前に知ってほしいこと——ブラウザの音声認識、既定は今もクラウド送信
ブラウザ標準のWeb Speech APIは、読み上げ(音声合成)はほぼ全ブラウザで枯れているのに、音声入力(音声認識)はFirefoxが不在のまま対応が割れている。Chrome 139で入ったオンデバイス処理はオプトインであり既定はクラウド送信のままという事実を、アクセシビリティという中心的価値とともに編集部の議論で検証する。
背景ぼかしは誰が計算するのか――ブラウザとNPUをつなぐWebNN APIはまだOrigin Trial段階
W3Cで2026年6月26日付のCandidate Recommendation Draftとなり、Chrome/Edge M147〜M149で一般公開Origin Trialが進むWebNN API。WebGPU推論との違い、NPUが可能にする常時AI処理、ハードウェア依存という壁を編集部の議論から整理する。
230ドルの小型キーボードは何を変えるのか――Codex Microは『AIの状態を読む道具』になる
OpenAIとWork Louderが限定生産のCodex Microを発売した。6つのAIタスクを光で追い、承認や音声入力を物理操作する小型デバイスは、単なるマクロパッドか、それともAIエージェント時代の新しいインターフェースか。
AIデータセンターは『電気と水を自前で用意せよ』なのか――5GW計画で読む、GPUの次の受益者
Metaの5GW級AIデータセンター拡張を起点に、電力会社、ガスタービン、送電・変圧器、蓄電池、液冷、水処理への波及を分解する。注目は『テーマ』ではなく、受注・料金回収・工期だ。
その広告、AIで作られたと分かったら安心できるか――表示ラベルの効き目と限界
Googleが広告のAI利用を示す表示を世界で拡大する。ラベルは何を知らせ、何を保証しないのか。広告を見た人の判断から考える。
声が自然なAIに、どこまで任せるか――GPT-Liveで変わる接客・支援・責任
OpenAIが発表したGPT-Live-1は、会話中の割り込みに自然に応じる音声AIだ。便利さと、誤案内・依存・プライバシーの境界を考える。
フィジカルAIは日本の勝ち筋になるか――国産モデルの『開始』を、現場導入の条件から読む
経済産業省とNEDOは、ロボットなど実世界で働くAIを見据えた国産マルチモーダル基盤モデルの開発を始めた。日本の現場力を競争力に変えるために必要な条件を考える。
AIに任せてよい仕事はどこまでか――GPT-5.6を7業種で検討した
GPT-5.6の登場で、AIは回答する道具から仕事を進める主体へ近づいた。製造、金融、医療、教育、創作、法務・人事、IT運用を横断し、委任できる仕事と人間が手放してはいけない判断の境界を探る。
コードを書く人は消えるのか――AI時代のプログラマを工程・言語・顧客で分解する
GPT-5.6でコーディングAIはさらに強くなった。ジュニアからアーキテクト、PythonからCOBOL、受託開発から金融・医療まで分けて考えると、消える仕事と残る責任が見えてくる。